我が家の愛犬シェルビーの亡くなった原因が、HEMANGIOSARCOMA 〜血管外膜細胞腫〜 だった。
これまで調べた結果、この病気は、血管の外膜に沢山の水泡や毛細血管をつくって腫瘍となり、非常に悪性で、転移性の高い癌ということだ。大型犬、中型犬の中年から老犬に多くみられ、特にジャーマンシェパード、ゴールデンリトリバーが、この癌にかかりやすいと、調査が出ている。また、1960年代後半の調査では、アメリカの犬の10%の死因が、HEMANGIOSARCOMAによるものだという。
HEMANGIOSARCOMAには、主に3種類あって、外皮にでるもの、内皮にでるもの、内蔵(主に脾臓、心臓)にでるものがある。外観や、触感で発見しやすい、先2つに比べ、内蔵にでるものには、犬にHEMANGIOSARCOMAの症状がでた時点で、肺、腸等に転移していることがほとんどだと言う。
病気の症状としては、食欲の減退、歯肉の血色が悪い、下痢、鼻からの出血、下血、腹部の腫れ、元気がなくなる、というものだが、この症状が出た時点では、たいていの場合、残された命は、6〜8週間だといわれている。
シェルビーに関して言うと、亡くなる約1週間前に、急に元気がなくなり、食欲も落ちたことがあった。食欲の減退に関しては、数週間前から切り替えた、老犬用のドッグフードが気に入らないものと思っていた。このときの元気のなさは、1日で治ってしまったので、余りシリアスに受け取らなかった。(今思えば、私が楽観的すぎた。)そして、亡くなる日の前の晩、極度の食欲の減退+色の濃いおしっこを、少量お漏らしするようになった。それでも、何度かは、外に出てトイレをしていたのと、ドッグフードの代わりにキャットフードをあげたら、ぺろりと一皿平らげてしまったので、膀胱炎になったものと思い、お医者さんに連れて行こうかな、と思い始めていた。 亡くなる当日の朝、朝一番でトイレに行きたがるのに、自力で立つこともままならない状態になってしまった。救急病院に電話して症状を伝えると、膀胱炎どころか、もっとひどい可能性があるので、すぐ来るように言われた。
獣医さんの診断とレントゲン撮影の結果、HEMANGIOSARCOMAという癌の疑いが非常に高いこと、シェルビーの体内で、腫瘍が破裂して、血液と思われる液体がたまっていること、癌と思われる腫瘍は、一カ所でなく数カ所に及んでいる可能性があることを聞かされた。
その場で、手術をするかどうか選択を迫られた。今考えてみると、手術だけでなく、安楽死という選択も、暗黙の了解で迫られていたのだけれど、その時の私は、手術をすれば、命が助かるものと信じて疑わなかったので、手術をお願いした。その後、もう一度、手術をしても、3ヶ月生きられればいい方だと念を押された。楽観的な私は、残された3ヶ月、シェルビーを思い切り甘やかしてやろうと思って、再度手術をお願いした。トニーは、私の決断を100%サポートすると言って、あくまでも私の意見を尊重してくれた。
シェルビーが手術をする際には、家で待機しているように言われたので、(この時点で獣医さんは、シェルビーの手術が、完了することはないと、分かっていたのだろう)病院を後にする前に、もう一度シェルビーにあわせてもらった。治療室で、点滴を打ってもらっていたシェルビーは、病院に来たときとは、打って変わって元気になり、私の顔を見るとしっぽを大きく振っているのが、かけられた毛布の上からでも、よくわかった。「手術をしたら、またお家に帰るんだよ」と声をかけて治療室を出ようとすると、シェルビーは、点滴のチューブを引きずりながら、私の後を追ってきた。この時のシェルビーが、余りに元気でいつも通りだったので、手術を終えて、2、3日後には、家に帰ってくるもと疑わなかった。
ところが、意外にも早くかかってきた電話は、「癌が内蔵の至る所に広がっていて、手の施しようのない」という内容で、麻酔の効いているうちに、安楽死させるか、麻酔が切れてからお別れするか、という選択を迫られた。私の脳は、全く働かなかった。こんなに簡単に、シェルビーの命について決めていいものなのか?重大な責任が大きくのしかかって来て、呼吸することさえ困難に感じられた。ただ一つ確実だったのは、シェルビーにこれ以上苦しい思いをさせられないことだった。
今思うと、シェルビーの健康に関して、あまりに無知で鈍感過ぎた。今となっては、何を言っても遅いのだけれど、せめてもう少し早く、お医者さんに行っていたら、とそんな気持ちで胸がいっぱいになってしまう。